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たかが夏休み されど夏休み
大分県知事 広瀬勝貞
大分住まいの良いところは、休みともなると、子どもたちが家族を連れて帰ってくることです。
何しろ山あり、海あり、温泉あり、加えて珍味の数々ですから、それを目当てに今年もお盆の頃に大集合しました。
「両親のご機嫌伺いに帰ってまいりました。」という殊勝な気配は毛頭なく、今さらながら親どうしで互いに躾の悪さを責め立てている始末です。
久々の再会ですから、彼らの帰省に間に合うように急いで読んだ本も引用しながら親の権威をかけて蘊蓄(うんちく)を傾けるのですが、最近は別の本にはこう書いてあるとか、実務の上ではそう理屈どおりにはいかないとか、反撃されることもあって、嬉しいやら、悔しいやらです。
仕方がないから彼らの知らない先祖の話に話題を変えて、「先祖を大事にしろ。ついでに親も大事にしろ。」と失地回復に努めるのですが、これも末の息子から「オヤジだって分かっていないんだ。」と異論が出ます。
彼の小さい頃同じことをいいながら、菩提寺の墓に連れて行ったのですが、実はどれがだれの墓か余り分かっていなくて、途中で笑われたことがあるものですから。
それにしても、子や孫がこれだけ集まると、長年のパートナーが、てんてこ舞いの子育ての頃を思い出して、絶対的な権威を持って子どもや嫁にあれこれ指示し、仕切っています。
本人は活き活きと楽しそうですが、もう一方のパートナーは忘れられ、時に居場所がありません。
いつも父親の味方になってくれる娘が見かねて、「パパは日頃大変なんだから、もう少し気を遣ってやったら。」と言ってくれるのですが、かのパートナーはすかさず、「いや大変なのはお互い様、パパも私がいなければ困るということが、最近よくわかった。」と恐ろしげなことを言っていました。
孫は小学校に入ったばかりの子が最年長ですから、目が離せません。本当に翻弄され、くたびれます。
「俺たちの時は子どもをもう少し叱り、躾をしてきたのになあ。」と二人で話しながらも、何だか口に出すのは遠慮してしまいます。
子育てを親から子に伝授するのは当然で、それを怠るのはよくないと、勇気を出して、子育てのエキスパートから教えてもらった「子育てはしっかり抱いて、下に降ろして、歩かせる」ことが大事という話を受け売りさせてもらいましたが、果たしてどのくらい分かったことか?
こちらも孫たちに力を誇示してやろうと、今年は周到にカブトムシ捕りの勉強をし、準備をして久住の山の方に出かけたのですが、1日目は酒に酔って寝てしまい、2日目は雨、3日目は仕掛け十分だったのですが、あそこは涼しすぎてそもそもいないのか、収穫ゼロで、相変わらず権威は上がりませんでした。
県政だより新時代おおいたvol.78 2011年9月発行